2023.02.08

連載「プロフェッショナル!挑戦する焼津の企業」小池スチロール~環境にやさしい発泡スチロールで持続可能をめざした新たな試み

小池スチロール本社屋

焼津市の特色ある産業というと真っ先に、水産業が思い浮かびます。

それにともない焼津市には、魚や加工品を保管・輸送するための発泡スチロール素材の容器を製造する会社が多くあります。これもまた焼津の特色ある産業と言えるでしょう。

その中の一つ、小池スチロールさんを取材しました。

創業は1970年、焼津市小川で小池スチロール工業所を設立し、1971年に現在の「株式会社小池スチロール」に社名を変更し、翌年本社となる治長請所に新工場を構えました。

工場は治長請所と大井川の2か所。本社工場では主に大手アイスメーカーのギフト箱、産業用品や家電などの梱包緩衝材などを、大井川工場では水産業向けの通称『魚箱』と呼ばれるスチロール箱を主体に製造しています。

◆変幻自在の発泡スチロール

そもそも、発泡スチロールははじめからあの白くて柔らかい”つぶつぶ”ではないことをご存知でしょうか?

元々は、石油を原料とした1㎜にも満たない小さなビーズ状の粒。それを蒸気により加熱すると発泡ガスの力で膨らみます。出来上がる製品の用途に合わせ、発泡粒の倍率をコントロールしています。

当然、発泡粒の倍率を上げるほど粒は大きく、柔らかくなります。

膨らませた発泡スチロールの粒(左) 原料のビーズ(右)

原料のビーズから発泡スチロール粒に加工している工程

膨らんだ発泡スチロールの粒はサイズなどの種類ごとに保管され、金型に充填されもう一度蒸気をかけることでビーズ同士がくっつき成形されます。

あの小さな粒が固められて瞬時に形になるのが不思議でずっと見ていられます。

成形されたスチロール製品はシューターで1階へと流され、検品されます。
発泡スチロールの粒を保管する袋

発泡スチロールの粒はこの管を通って成形機へと流れていきます

金型に発泡スチロールの粒が充填、プレスされて蒸気により加熱し成形されます

金型で成形された製品

出来上がった製品(緩衝材)

 

◆様々な分野で活躍する発泡スチロール

発泡スチロールと聞くと、先にあるように魚箱や保冷ボックスのように容器としての製品がぱっと思い浮かびます。その他にも汎用性がとても高く、身近なものだと家電やデリケートな製品の緩衝材、また寒い地域では家の断熱材など、発泡スチロールはわたしたちの生活にはなくてはならない製品です。

そして今回お話を伺って驚いたのが、発泡スチロールが道路に埋め込まれているということ。

軽量かつ耐久性もある大型発泡スチロールブロックを盛土として地下に埋めることで、工事の期間を短縮できることもあり、台風などの災害で崩れた道路の修繕にも使われているそうです。

その他、最近では車の部品など、従来の素材に比べ軽量でありながら衝撃を和らげられる特性が様々な産業に活かされ活躍の場が広がっています。

製品の特長を説明する小池社長

 

◆工夫を重ねてよりよい製品を

製品一つを見てもそこには工夫がたくさん。

例えば、アイスのギフトボックスの底にます目の溝があります。

これは、ドライアイスの冷気をボックス内で循環させてまんべんなく保冷効果を持たせるため。

また、発泡スチロールは重量はかなり軽いのですが容積がかさばるため運送費が割高になってしまうという問題に対しては、箱と箱を向きを変えて重ねられる形状にして体積を減らし、積載効率をアップさせる工夫をし1台のトラックで1.5倍の量を運ぶことができます。

「‟こうしたらどうか”と常に考え、少しの工夫で製品がより便利に機能的になるよう既存の商品の改善にも努めている」と小池社長。

聞くと以前、小池社長のご友人が「(店舗先などに置く)のぼりがポールに絡まってしまって困っている、何か作れないかなあ?」と悩まれていたときも、発泡スチロールで部品をつくり、お悩みを解決してあげたそうです。社長さんの優しいお人柄がうかがえるエピソードでした。

お客さまからの要望に柔軟に応え理想の製品を実現するだけでなく、このように工夫を行って利便性、コスト削減に努めているからこそお客さまからの信頼につながっているのだと感じました。

ものづくりへの思いを語る小池社長

絡みつきを防ぐための部品を製作

 

◆世間のイメージとは違った環境への影響

さらに小池スチロールさんは、環境問題にも着目しています。

そもそも発泡スチロールの98%は空気でできており、石油はたった2%と他のプラスチックなどと比べてみても非常に省資源の素材となっています。

世間では、発泡スチロールはプラスチックに分類されることから、「環境に悪影響なのではないか」とネガティブなイメージがつきがちだそうで、このイメージを何とか変えることができたらとおっしゃっていました。

発泡スチロールの原料は石油ですから、完全燃焼下では水と空気になってしまうので燃えがらや灰が残る心配もありません。また、燃焼時に有害物質などの心配もなく、正しい処分を行えば環境に悪影響を及ぼすことは少ないといわれています。

◆正しい処分で3つの方法でリサイクルできる!

発泡スチロールはマテリアルサイクル、ケミカルリサイクル、エネルギーリカバリーの3つの方法でリサイクルすることがでる、まさに循環型の持続可能な産業です。

1.マテリアルリサイクル
粉砕し、高い保温効果や軽量性を活かして建材や土木、包装材用の再生発泡スチロールに。

その他、溶かして堅い棒状に固めて「インゴット」というポリスチレンのかたまりから、細かいチップ状にした再生ペレットになります。その後、再度発泡スチロールや文具、合成木材として生まれ変わります。

2.ケミカルリサイクル
高炉(鉄を作り出す溶鉱炉)の還元材として、ガス化・油化して化学原料となり再利用されます。

3.エネルギーリカバリー
あらゆる燃料となり、発電、セメント燃料などとして、また焼却熱を発電や温水としてエネルギーをー回収します。

普段の生活で発泡スチロールの処分に困ることがあると思います。資源ごみの回収日にプラスチック資源として出せば、正しくリサイクルされます。使用後にゴミとなるのか生まれ変わらせるのかはわたしたち次第ともいえますね。

 

◆これからの展開

しかし、社長さんには最近ある悩みが。

「また新しい商品をつくりたいがなかなかアイデアが浮かばない。スチロール業界の弱みとしてつくれる製品が限られたり、量産してもなかなか売れない、金型が高く1つの製品を作る際のコストが販売量に見合わない」とおっしゃっていました。

ですが、2021年11月に心強い助っ人・息子の和広さんが入社しました!

埼玉から焼津にUターンした和広さんは、現在、営業をしながら会社のことを勉強しているそうです。

和広さんには、「ターントクルこども館の温かみのある木のおもちゃのように、スチロール特有の柔らかさや軽さを生かして子ども用の遊具やおもちゃを開発したい」と素敵な目標が!

ご自身も子育て世代であることから、育児や教育に興味を持たれているようです。

小池社長の悩みもカバーしたいと話す和広さん

 

最後にUターン移住者でもある和広さんに、改めて感じる焼津の良いところについて聞いてみました。
「まず、食べ物がおいしい。ちょっとした居酒屋さんなどに入ってもどこでもおいしいし安い!あとは、あたたかい人が多いです。」

取材中、和広さんが親切にご提案や案内をしてくださったことで、私自身も焼津のあたたかさに触れた取材でした。

小池スチロールさん、ありがとうございました!

左から和広さん・弘さん(社長)

◆取材を通して感じたこと

私の職場は水産加工業で、普段発泡スチロール会社さんにはお世話になっています。

今回、実際につくっている方々のお話を聞いたり、製造工程を目にすることでそこに込められた思いなどを知ることができました。
同じ製造業として作り手の思いは通ずるところが多く、しかしそれを世間の人たちに知ってもらえる機会は多くありません。微力ながら、記事を読んでくれた方に届ける手助けとなれば嬉しく思います。
和広さんは小・中学生時代の先輩でもあります。今回このような形で再会できたことで、活躍を知り嬉しい気持ちになりました。

・小池スチロール様Webサイト⇒https://koike-eps.co.jp/

 

まちかどリポーター:あきの
この記事を書いた人
焼津まちかどリポーター 
あきの

焼津で生まれ育ち、現在は焼津の水産会社で広報を担当。その中で焼津の良さを再発見したことをきっかけに、地元の人にも知られていないような焼津のおもしろさをもっと多くの人に知ってほしいと思い、まちリポに参加。
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