2023.08.12

焼津の人情が息づく「浜言葉」がデジタル化されました

焼津の人情が息づく「浜言葉」がデジタル化されました

『人情を今に伝える焼津の浜言葉』

 

焼津市歴史民俗資料館のウェブサイトに保存

焼津の漁師さんたちを中心に使われていた「浜言葉」をふだん聞くことはほとんどありません。

その一方で、平成20(2008)年には、故長谷川寅吉さんが中心となって作った「焼津の浜言葉を遺す会」が日常生活のやりとりや、紙芝居の朗読を収録したCDを自主製作し、平成29(2017)年には、長谷川さん編著の浜言葉辞典『人情を今に伝える焼津の浜言葉』が学校法人静岡精華学園の運営する静岡福祉大学から出版されました。

先ごろ、静岡精華学園は社会貢献活動の一環として、同書の内容をデジタル化して焼津市に寄贈、焼津市歴史民俗資料館のウェブサイトに保存されることが決まりました。デジタルデータはPDF化された浜言葉辞典に加えて、長谷川さんが生まれ育った焼津のまちと水産加工に携わった思い出を語るインタビュー記事や、浜言葉版紙芝居「津波だ!いなむらの火をけすな」等も掲載され、読み物としても楽しめる内容となっています。音声部分は、「井戸端会議」、「悪童達の会話」、「漁師のオカミさん連中の会話」、「塩サバ屋の多忙な一日」など、生活シーンごとにまとめられ、焼津の古き良き時代がありありとよみがえってきます。

 

頭離し、おろし、相立ち、あじきり(上から)は今もカツオのさばきに使われる包丁。同書から

浜言葉版紙芝居「津波だ!いなむらの火を消すな」

 

去る8月4日、焼津市役所の市長室でおこなわれた贈呈式では、長谷川寅吉さん自らが浜言葉で朗読した本の「まえがき」が会場で流れました。焼津市魚仲水産加工業協同組合長でもあるご子息の長谷川寛さんは「しょっちゅう机に向かって浜言葉を書き留めていた父の姿を思い出しました」と振り返り、中野弘道焼津市長は「子供の頃はごくふつうに浜言葉を話してました。デジタル化によって、イントネーションを含め、いきいきとした言葉として残されていくことになり感謝しています」とあいさつのなかで触れました。

杉原桂子静岡精華学園理事長と中野弘道焼津市長。贈呈式にて

 

人々の心の機微を伝える言語としての方言

方言はなまった言い方というイメージでとらえられがちですが、ユネスコは方言を「言語」として位置づけています。平成21(2009)年には、日本のアイヌ語や八重山方言など8つの言語(方言)が消滅の危機にあるとも発表しました。文化庁も言語・方言サミットを開催し、音声資料のアーカイブ化を進めています。有名な奈良の法隆寺が文化遺産として知られているように、浜言葉も後世に伝える言語文化ということができます。音声を含むデジタル版浜言葉がネットに置かれることで、日本に限らず世界の言語学者にとっても貴重な文献資料となるにちがいありません。

本書にも書かれていますが、浜言葉に限らず、方言は民芸や祭などと同じように、その土地に住み続けた人々がつむいできた地方独自の表現方法といえます。長い歴史のなかで、ときにはどうにもならない悲しみや、どうしようもない怒りなどの感情を、その地方ならではの言い回しで代々、伝えてきた知恵にほかなりません。方言によって世代を超えた豊かな会話が成り立ちます。そして、時を経て地方の言い伝えや物語を生み、さらに歌や芝居となって広がり、すばらしい伝統芸能として歴史に深く刻まれていくのではないでしょうか。

本書の題名にあるように、焼津の人情もまた浜言葉とともに、絶えることなく何世代にもわたって受け継がれていくことを期待したいと思います。

さて、次の浜言葉はどういう意味か分かりますか。

 

①いせじたち 今日は かざまで にしがふく

②けぶってぇー この臭いは かぼくさい

③えいきんで かんだい計る 生利節

④せーだって わしゃー何にも しえーない

(答えは、下記のウェブサイトの『人情を今に伝える焼津の浜言葉』デジタル版。33ページの「浜言葉いろはがるた」)

焼津市歴史民俗資料館のウェブサイト(浜言葉)

https://www.city.yaizu.lg.jp/rekimin/bunkazai/kotoba/hamakotoba/index.html

まちかどリポーター:はる
この記事を書いた人
焼津まちかどリポーター 
はる

焼津が、美術、音楽、演劇、映像、文学など、若い人のアート表現を応援し支えるまちであって欲しいと心から願っています。 そのお役に立てるように、これからも歩んでいきたいと思います。
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