2017.09.11

本物のコーヒー、通いたくなる空間

飲食サービス業
Café Cereza(カフェ・セレサ)
オーナー

作原 いつ乃さん

やいづ応援団
50代
静岡県焼津市
= Profile =
1964年生まれ。焼津市出身。県内の短大を卒業後、大手メーカーの営業として28年間勤務した。50歳を迎える前にやりたいことに挑戦しようと決意し、企業人生活に終止符を打つと、夢だった喫茶店の開業準備に着手。2014年、地元焼津にこだわりの喫茶店をオープンした。

きっかけ

学生時代の夢は「地元で喫茶店」
 私には高校生のときから憧れていた喫茶店があって、「私もいつか地元の焼津で喫茶店を開きたい」とずっと思っていました。でも、私が高校を卒業する頃は、女性の起業なんて発想がない時代。企業に勤めてもすぐに寿退職をする人がとても多かったです。私も専門学校で食品系を学ぼうか悩みましたが、結局、短大の国文科に進学して図書館司書を学びました。
 「カフェ・セレサ」をはじめたのは、50歳を目前にしたとき。短大を卒業したあとは、事務機器メーカーに営業として30年ほど勤めていたんですが、50歳を前にして、「やりたかったことに挑戦しよう」と思い立ったんです。お金も貯まりましたし、海外旅行で各地のコーヒーを飲んだり、お店をめぐるなかで、イメージが湧いてきたというのも理由の一つですね。見てきたもの、味わってきたものを形にしたい、と思ったんです。
 夫も大賛成してくれましたので、2年ほどオープンの準備に費やしたのちの2014年11月に、念願の喫茶店をオープンさせました。「女性の喜んでくれるお店」を目指して、設計も造園も女性の専門家にお願いしました。コーヒー豆はもちろんですが、外観や庭、内装、カップ、カウンターの無垢版など、細部にいたるまで自分の想いをつめ込みました。3年経った今でも自慢の、こだわりの空間です。

仕事について

フルーツのような格別なコーヒー
 お店のビジョンは明確にあったんですが、実は1か月前まで決まっていなかったのがコーヒー豆です。うちでは「ミカフェート」という一流のホテルやファーストクラスで扱われるようなコーヒー豆を扱っています。
 ミカフェートは、静岡出身のコーヒーハンター 川島良彰さんが生産地、収穫、輸送・保管方法、焙煎などコーヒーが消費者のもとに届くまでのすべての工程をこだわりぬいています。美味しいことはもともと知っていたんですが、コーヒー豆に悩んでいたときに、もう1年の3分の2は海外というような川島さんが日本に一時帰国していて、セミナーを開催されていたんです。そこで直接アポイントをとって、当店でミカフェートの豆を扱わせていただくことになりました。
 喫茶店をオープンさせるときに目指していたのは、「大人に納得していただける、ちゃんとした喫茶店」。コーヒー豆や店内の内観にそこまでこだわらなくてもいいのかもしれませんが、「カフェ・セレサという空間をどういう価値観でつくっていこう」と考えたときにミカフェートはぴったりのパートナーでした。ミカフェートのコーヒーを目当てに、市外から訪れてくれるお客様もいらっしゃいます。
まちの文化が生きる場所
 お店は焼津文化センター前の広い通りに面していて、音楽、芸術の余韻が感じられるエリアです。店内でも、月替わりで地元の作家さんやアーティストの方々の写真展やジャズコンサートを開いています。今はお店の壁面に「waC」という特別支援学校を卒業した人たちの作品を展示しています。
 わたし自身、音楽や写真、絵が好きなので、初めから店内の外壁は落ち着いた白色で、天井も防音にして音がまわるように設計しました。作家さんやアーティストの方々を起点に口コミが広がったり、お客さんの新しい趣味や遊びの会話が広がる場になったりしています。
 それに、焼津には生産者さんが多いからか「おうつり文化」があって、人になにかをあげたり、もらったりということが普段も多いんですよ。わたしもタッパーでおかずをいただくことがあるんだけど、そのタッパーを返すときに、何かお菓子をいれて返すんです。
 ここは老若男女が集まる場所で、昔は当たり前だった世間の大人とのやりとりができる場でもあります。大事にしていきたい文化がセレサには生きています。実は退職金はすべてこのお店に費やしたんですけど、ものは考え方。自分の働く場所をつくって、それが自分だけじゃなくて地元にとってもいい収益になる。カフェ・セレサに訪れる人との縁を大切にしながら、地域を元気にする場所であり続けたいですね。

作原 いつ乃さんがオススメする焼津のイイトコ

「朝の瀬戸川」
焼津を南北を分けるように広がる瀬戸川。作原さんおすすめは、この瀬戸川沿いを朝歩くこと。「鳥がたくさん飛び交っているんですよ」と作原さん。広々としていて気持ちがいいのだそう。ちなみに、身近な釣りポイントでもある。釣れる魚はハゼ、セイゴ、キビレなど。
« 前の記事 那須野 絢子 2017.08.31