2018.03.24

シアタープロジェクト静岡公演「焼津に〝来て〟異邦人編」

「焼津にて」、「漂流」、「乙吉のだるま」…。焼津を度々訪れ作品を執筆した文豪小泉八雲。
その足跡を紹介している焼津小泉八雲記念館は2017年度で10周年を迎え、様々な記念事業を展開しました。その最後を飾るイベントとして3月11日(日)、焼津文化会館小ホールで開催されたシアタープロジェクト静岡公演「焼津に“来て”異邦人編」。地方にまつわる演目の上演を通じたまちづくりに取り組むシアタープロジェクト静岡、今回は東京在住の劇団員が実際に焼津の街を歩き撮影した映像と、演劇・朗読を組み合わせた作品。八雲同様異邦人として焼津を歩いた劇団員のお二人のロケハンに同行し、小泉八雲の目を借りて焼津の魅力を探しに出かけました。

JR焼津駅から徒歩13分に位置する焼津神社

焼津神社の次に訪れた熊野神社は知る人ぞ知るパワースポット

最初に訪れたのは駅から徒歩13分に位置する焼津神社、決まってお盆に訪れた八雲にとっては祭りを通して焼津文化に親しみました。今も当時と変わらず夏には神輿を担いで活気のある祭り(「荒祭」)になるそう。黒石川方面へさらに進むと熊野神社が見えてきます。当時とあまり変わらない本殿とそれを囲む荘厳な松林。八雲は焼津の友人である乙吉と訪れた夜の散歩中ここで突然地面が熱くなるという不思議を体験しています。まだ残っている跡地に恐る恐る近づいてみましたが、熱くはありませんでした。しかし澄んだ空気の静かな林はなにかを期待させる雰囲気……。八雲と乙吉はきっと肝試しをする少年気分だったのではと思わせます。海沿いの浜通りには多くのかつお節工場でにぎわったという当時の面影はなく静かな街並み、けれど今はなき乙吉の家跡に吹く潮風は当時も吹いていたのでしょう。

熊野神社の裏側へ

 

こちらが乙吉たちが「アッチッチ」と飛び退いた場所

演出家の桐山知也さんは八雲が焼津で書いた「乙吉のだるま」は非常に筆が軽やかでリラックスしているように感じたそうです。また俳優の佐川健之輔さんは八雲にとっての焼津は「心休まる場所」だったのではと語ります。日に何度も海で泳ぎ友人と語らう、焼津に残された八雲のエピソードはどれも自然体であり故郷で旧友と過ごすような気兼ねなさが伝わります。各地を転々とした異邦人である八雲にとって焼津は居心地の良い第二のふるさとだったのでは改めて感じました。

シアタープロジェクト公演のため何度も焼津に訪れている劇団のみなさん

今回の公演は実際に劇団員の方が焼津の街で出会ったある外国人美容師の方の話が盛り込まれています。日本に憧れ東京に住んだものの、せわしない街に疲れを感じた頃、彼は奥さんの実家のある焼津に移住したそうです。穏やかな時の流れ、随所に残る焼津文化に魅せられた彼はこの街で美容師として働いています。異邦人として焼津に流れ着いた姿は現代版小泉八雲。彼と八雲の体験した焼津の姿は大きく異なりますが、誰のふるさとにもなれる風土が今も昔もあるまち焼津。物語を片手に八雲の目を借りて、今一度焼津の街で「ふるさと」を探してみませんか?

まちかどリポーター:寺島 美夏
この記事を書いた人
焼津まちかどリポーター 
寺島 美夏

静岡県富士市出身・在住。2017年夏に初めて焼津市を訪れ興味を持つ。小泉八雲記念館と焼津市立図書館がお気に入り。いつか焼津でとれたおいしいマグロを食べられる日を夢見ている。
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