2017.09.19

クリエイティブで伝える、焼津の『らしさ』

情報通信業
株式会社ナイン
代表取締役

渋谷 太郎さん

Uターン
40代
静岡県焼津市
= Profile =
1975年、焼津市生まれ。東京都江東区在住。株式会社アイ・エム・ジェイの勤務を経て、2013年に「デジタルとクリエイターの力で地域の『らしさ』を磨く。」を理念に掲げる株式会社ナインを設立。企業のデジタルマーケティング&クリエイティブ活動を支援するとともに、2006年にはデジタルハリウッド大学院の客員教授を務め、若手クリエイターの育成にも力を注いでいる。

憧れの東京志向から地方に目を向けるまで

 私はデジタルとクリエイターの力で地域の『らしさ』を磨くという理念のもと、4年前に株式会社ナインを設立しました。東日本大震災以降、人々の意識は、社会的な課題を解決する活動へと向けられました。今も、全国各地で地方創生の活動が積極的にされていますよね?私は、地方創生の核となるのは、その地元ならではの活性化を推進することだと思います。拠点は東京ではありますが、地方創生や社会貢献にチャレンジできる会社をつくりたいとずっと考えていました。
 とはいうものの、焼津に生まれ、静岡の大学に進学した学生時代は、東京への憧れから『焼津・静岡から抜け出して、もっとガツガツ・キラキラ生きたい』ということしか考えていませんでした。ですから、卒業後は迷わず東京の企業に就職しました。しかし、憧れだったはずの東京の企業に就職したものの、失敗や挫折、後悔も多くありました。自分の経験も足りず、想像していた「東京ライフ」とは言えませんでした。
 転機が訪れたのは24歳のとき。株式会社アイ・エム・ジェイに転職したことです。当時は、2000年前後ですからインターネットの黎明期。Webデザインやプログラム、企画など、数多くの経験を積むことができました。

地方創生・社会貢献にデジタル・クリエイティブで臨む

 27歳の頃、そうした思いを抱えながらフリーランスで活動するようになりました。前職(アイ・エム・ジェイ)からも発注をいただきながら、順調に仕事をしていましたが、30歳になり「成長実感」の薄さに焦りを感じました。ちょうど前職の現場リーダーの誘いもあり、株式会社アイ・エム・ジェイに再入社。再入社したことで、以前とは違ったプロデュース業務、チームマネジメント、事業開発等々、再び多くの経験とご縁をいただき、一度フリーで活動をしていた経験も相まって、『視座』を高めることができました。今の自分があるのは、この会社とそこで出会った人たちのおかげです。
 その7年後、改めて独立し、株式会社ナインを設立しました。設立のきっかけになったのは、高校時代の先生との再会でした。高校時代の先生と飲む機会があり、「オレの教員生活も残り10年。教員をどう終えるかを考えるようになった」という言葉に強く心を動かされたんです。さらに、当時起こった東日本大震災もあって、『人生の残り時間』への意識が高まったということもあります。そこで、以前からやりたかった会社経営・事業開発・地方創生・社会貢献にチャレンジするべく、会社を設立しました。

『らしさ』を伝えるのではなく“磨く”

 地方創生や社会貢献のポイントは、「その地域らしさを磨いているか」「経済的に自立しているか」「地域の人たち自らが推進できるか」の3つだと、私は考えています。
 焼津であれば、酒と魚といった、もともと持っている焼津の『らしさ』をうまく引き出していく。もちろん、酒も魚も日本トップクラスのブランド力を誇っていますから、すでに行政でも取り組まれていると思います。重要なのは、引き出す手法や徹底の仕方です。強いブランドをもっている地域はとても希少だと思いますから、それらに、広い意味での「学び」を加えて、酒と魚と学びがミックスされた街になったらいいなと妄想しています。
 その時に鍵になるのが、取り組んでいるクリエイターの育成や地方における『デジタルの底上げ』。株式会社ナインの拠点は東京ですが、その傍ら、故郷である焼津での地域活性化に取り組んでいきたいと思っています。例えば、駅前の空き店舗を活用して、「まちづくり」や「学び」の拠点になるスポットをつくったり、そのリアルのスポットとWeb、紙を組み合わせて焼津らしい暮らしを磨きながら発信する場をつくったり。はんぺんフライ、鰹のへそ、スナック文化など、焼津には磨けば光る文化がたくさんあると感じます。

渋谷 太郎さんがオススメする焼津のイイトコ

「赤ちょうちん(居酒屋)」
「大漁やまちゃん、かどや、黒潮、一楽、のんの……、昔ながらの居酒屋の佇まいが好きです」と渋谷さん。幼少期は、父親がよく飲みに行っていた近所の「角打ち」に、時々ついていったのだそう。「焼津の魚と、酒で盛り上がるご近所コミュニティ、そんなスポットも増えたらいいですね」と夢をふくらませてくれました。
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