2021.02.28

丸又さん、魚秀さんに聞きました!こだわりの「いわしはんぺん(黒はんぺん)」と「白はんぺん」

「2袋で100円!」

これが、浜松から清水に引っ越してきた、私の黒はんぺんとの最初の出会いでした。
小学生ながら、その安さに驚き、はんぺんの黒さに驚きました。
そして、口にした瞬間の「魚臭さ」と「粗さ」を鮮明に覚えています。

浜松出身の私にとって「はんぺん」と言えば「白はんぺん」で、白くて、モチモチした食感のものでした。
結局、その時は、自分では食べることが出来ずに、父のお酒のおつまみになりました。
黒はんぺんを本格的に食べ始めたのは、食欲旺盛な中学生になってからでした。

添加物を嫌う母のお眼鏡にかなったのか、冷蔵庫にはいつも黒はんぺんがありました。 おでんはもちろん、軽くあぶって唐辛子醤油につけたり、フライにしたり。 徐々に、食卓に上るようになり、次第に、慣れ親しむようになりました。「魚臭さ」は「風味」、「粗さ」は「歯ごたえ」と捉えるようなりました。

高校生になって、毎週日曜日に、家族で買い物に出かけ、スーパーで見かける黒はんぺんを片っ端から買い、メーカー別に味や食感の違いを楽しむという遊びを覚えました。 この頃は、おかずというよりおやつ感覚で、専ら、生で食べていました。 お気に入りを見つけて、リピート買いしていました。 そして、この購買習慣は、飽きることなく、今に続いています。

平成6年(1994年)5月に、家を購入し、焼津に移り住んで、早いもので、27年。

黒はんぺんの聖地で、人生の約半分を過ごすという幸運に恵まれました。 さらに、昨年、焼津まちかどリポーター募集の記事に巡り合いました。 このご縁で、是非、黒はんぺんに関わる方のお話を伺いたいと希望しました。

蒲鉾組合の押尾課長様にご尽力いただき、1月30日に株式会社丸又の代表取締役社長である鈴木理恵子様に取材をさせて頂きました。

丸又さんこだわりの「いわしはんぺん」

取材に先立ち、丸又さんのHPを拝見し、興味を持ったのが、「小川港で水揚げされたマイワシを主原料にして、サバとタラスリミを加え」という件でした。
早速、工場直売所で購入したのですが、そこには「黒はんぺん」ではなく「いわしはんぺん」の文字がありました。

https://www.marumata.jp/

試食して、まず、驚いたのは「臭み」が一切ないこと、そして「骨っぽさ」が感じられないことでした。
黒はんぺんの特徴的な要素を持たない、初めての食感でした。 「黒はんぺん」と「いわしはんぺん」とは、どう違うのか? なぜ臭くないのか? なぜ滑らかなのか? 取材メモは埋まっていきました。

当日、お聞きしたのは『鰯が魚へんに弱いと書くのは、足が早い(腐りやすい)「よわし」に由来するという説がある 』とのことで、流通の難しさは容易に想像がつきました。
そのイワシを主原料とした商品で、通販サイト等による全国展開に勝機を見出そうとする販売方針に鈴木社長の決意を感じました。

 

鈴木理恵子社長

臭みのない、滑らかなはんぺんがいかにして製造されているか?

それは、鈴木社長のゆるぎない理念
「私たちの体は食べるもので出来ています。原材料と水にこだわり、添加物に依存しない食品づくりにより、美味しさと感動を提供できる企業を目指し、食を通して社会に貢献して参ります」
を体現しているものでした。

はんぺんづくりに適した上質なマイワシの確保を一番に重視。製造作りの源である水は、南アルプスを水源とする大井川水系の伏流水を引き込んだ焼津の美味しい水を、日本に数台しかない特別な装置を使い、幾重にもろ過して、「命の水」として製造の全工程で使われているそうです。

お伺いした、製造工程をまとめると次のようになります。

①頭と内臓を除去した、マイワシとサバを命の水で丁寧に洗う(魚臭さがなくなる)

➁洗浄して水切りしたマイワシは骨ごと、サバは骨と皮を除去してミンチにする

③ミンチにしたマイワシとサバ、リン酸塩無添加のタラのスリミを石臼に入れ、天然ミネラルを多く含むアンデスの紅塩を使用して、丁寧に素材の旨味を引きだしていく(塩摺り)

④馬鈴薯澱粉(つなぎ)、天然の喜界島の粗糖(砂糖)、魚醬(天日塩で発酵させたもの)で調味して、氷水(命の水を使用)で延ばしながら、時間をかけて仕上げていく

⑤摺りあがったスリミを成型し、命の水で茹で、冷却する

 

天然調味料を使用するのは、旨味のためだけではなく、栄養成分を吸収しやすくするためでもあり、職人の方々も、添加物に依存しない製品作りのために、研鑽を積み、丹精込めて作っていらっしゃるそうです。
お話を伺っただけで、会社一丸となって、より良い製品作りを目指されている様子が目に浮かびました。
臭みや骨っぽさを感じないのは、丹念な仕事の賜物でした。丸又さんがこだわって作る黒はんぺんの中でも、イワシの含有率が6割以上を占めるものを「いわしはんぺん」と名付けて販売していることがわかりました。

少し、脱線してしまいますが、今、鈴木社長が力を注いでいらっしゃる商品をご紹介します。

2020年8月に発売された「薬膳のスープ」と「鰯つみれのおでん」です。
どちらも冷凍食品で、温めるだけで、出来立ての美味しさを楽しめる商品だそうです。薬膳スープはもとより、おでんは減塩タイプ。健康志向の高まりにしっかり対応していらっしゃいます。
通信販売に特化し、保存期間は180日と消費者にとって、嬉しい商品です。開発秘話をお聞きすればするほど、鈴木社長の熱意を肌で感じ、第三者である私まで、愛着をもってしまいました。取り寄せしたのは言うまでもありません。

取材後、一般にはあまり流通していないという「いわし調味すり身」をお願いして、出していただきました。帰宅して、早速、すり身をお湯に落とし「鰯団子」を作ってみました。茹で上がったばかりの、お団子を、生姜と小口ネギを添えたお醤油でいただきました。ぷりぷりの食感と、イワシの旨味が詰まった、しっかりとしたお味で、「いわしはんぺん」とは一味違うイワシの楽しみ方を発見しました。

 鰯団子とつけ醤油

わたしのもう1つのソウルフード「魚秀さんの白はんぺん」

最後に、私のソウルフード「白はんぺん」について触れたいと思います。
幼いころ、祖母に手を引かれて行く、八百屋さんの一角に練り物のコーナーがありました。
祖母が見繕って、今はもう殆ど見かけなくなってしまった「経木(きょうぎ)」に包んでもらい、大事に抱えて帰るのが日課でした。祖母の練り物好きを遺伝的に譲り受けたのか、この頃から、練り物、とりわけ、白はんぺんが大好きでした。

幼稚園から帰って、おやつは、白はんぺんということもありました。冬の寒い時期は、祖母が、煉炭火鉢で軽くあぶって食べさせてくれました。熱々の白はんぺんをほおばった記憶があります。

清水に引っ越してからは、浜松の祖父母の家を訪ねるたびに、白はんぺんを大量に買って帰ったものです。冒頭、お伝えしたように「黒はんぺんと出会うまでは」です。

昨年、久しぶりに白はんぺんが食べたくなり、叔母に頼んだところ、用意してくれたのが、舞阪町の魚秀さんの白はんぺんでした。大変美味しくいただき、年末に取り寄せをしたところ、今は亡き母が、何度か取り寄せをしていたことがわかりました。ご縁を感じ、今回の取材記事に取り上げてもいいかお尋ねしたところ、ご快諾いただけましたので、ご紹介します。

「茹でる」より10倍時間がかかる「蒸し」の製法を昔から一貫してとっておられ、石臼での「練り込み」も受け継がれてきた技術とノウハウで一定の温度管理をしながら、他社さんよりも時間をかけて行っているそうです。厳選した素材を、季節によって、配合を変え、つなぎも、北海道内の産地を変えて使っていると教えていただきました。全ては、味への、こだわりです。

一度、お試しいただければ、丁寧な仕事ぶりを、実感いただけると思います。
本記事では、ご紹介出来なかったのですが、焼津には他にもたくさんの黒はんぺんがあります。

是非、食べ比べしてお気に入りの黒はんぺんを見つけてみて下さい。
興味がおありな方はこちら。

【丸又 公式サイト】https://www.marumata.jp/

【魚秀 公式サイト】http://uohide.jp

まちかどリポーター:やすぶー
この記事を書いた人
焼津まちかどリポーター 
やすぶー

浜松市出身。焼津に移り住んで27年。「焼津まちかどリポーター募集」の記事を見て、子どもの頃の夢「新聞記者になりたい」を懐かしく思い出しました。焼津のことをもっと知って、人生を豊かなものにしていけたらと思っています。
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