林叟院入口
焼津市に「坐禅(ざぜん)ができるお寺」があることをご存知でしょうか?
高草山の麓にある林叟院(りんそういん)は、早朝坐禅や坐禅体験会を行っているお寺です。550年の歴史があり、外国人の参加も受け入れています。
2021年6月、その林叟院に坐禅体験に行ってきました。
この記事は、「坐禅に興味があるけど、正しい作法を知らない」「静かなお寺で坐禅体験をしてリフレッシュしたい」という方に、坐禅の意味や知っておきたい作法を紹介します。
1.「坐禅堂」のある林叟院
林叟院は、焼津市の高草山にある曹洞宗のお寺です。
ハイキングコースとしても人気のある高草山は、観光地として「たかくさやま」と呼ばれ親しまれていますが、お寺の山号として呼ぶときは「こうそうざん」と読みます。
林叟院で坐禅ができるのは、「早朝坐禅」と「坐禅体験会」です。
坐禅をするのは、「坐禅堂」と呼ばれる坐禅の道場。
林叟院の坐禅堂
今回は説明を受けながら「坐禅体験会」に参加しました(※事前申し込みが必要です)。
2.坐禅の作法
まず、初めて坐禅をするときに知っておきたい作法について、副住職の鈴木俊呉さんから教えていただきました。
鈴木俊呉さん
「坐禅」と「座禅」、どちらが正しい?
答えは「坐禅」です。「坐」は「坐(すわ)る」という動作を指しており、「座」は「座る場所」を指しています。「广」は屋根の下、部屋の中にいる形を表しているそう。場所ではなく、「坐る」という動作そのものが大事なのだそうです。
入堂から坐禅、退堂までの流れ
①入堂
坐禅堂に入るため、まずは「合掌」と「叉手(しゃしゅ)」を正しく覚えます。
「叉手」とは、左手の親指を内にして握り、手の甲を外に向けて胸に軽く当て、右手のひらで覆う姿勢のこと。
叉手の姿勢で入堂しますが、このとき入口の左側にある柱のそばから入ります。
足は左足から入ることが作法だそうです。
入堂したら、ご本尊さまに合掌し、頭を下げます。
その後、叉手に戻し、自分の坐る位置に進みます。
②挨拶~着座
次は、自分の坐る位置に向かって合掌し、頭を下げます。
もし隣に他の人もいたら、同じように挨拶をしましょう。
挨拶を終えたら、着座です。
鈴木さんによると、坐るときに一番知っておいてほしいことは、畳の外側にある「浄縁(じょうえん)」と呼ばれる木のフチに触れないようにすることだそう。僧侶にとって浄縁は、食事を置く清浄な場所。常に綺麗に保てるよう、手と足が触れることが禁じられているそうです。
浄縁
淨縁に触れないように、坐蒲(ざふ)に腰掛け、右回りで壁の方を向きます。坐蒲がおしりの中心に位置するように足を組み、身体を支えたら、右手を左の足の上にのせ、その上に左手をのせて、両手の親指を軽く合わせます。
そして、深く息を鼻から吸い込み、口から大きく吐き出します。
目は細めて、目線は斜め下に向けます。上体を左右に揺らして、徐々に身体の中心で静止します。
③坐禅
鐘が3回鳴ったら、坐禅開始の合図です。
坐禅中のわたしは無意識のうちに雑念が浮かんでしまいましたが、「坐禅は何かを忘れるため、悟りのための手段ではありません。ただひたすらに坐ることが坐禅の意義です」と、鈴木さんから教えていただき安心しました。
坐禅中
④退堂
20分ほどして鐘が1回鳴ったら、坐禅終了の合図です。
坐禅し終わったら、合掌一礼をして、両手の掌を上にして膝に置きます。上体を左右に振れて、足をリラックスさせてから、立ち上がります。坐蒲を元の形に整え、叉手の姿勢で退堂します(出るときは右足から出ます)。
3.林叟院の坐禅体験について
満開の紫陽花
初めての坐禅体験でしたが、こんなに心が静まる経験はめったにないです。
それに林叟院は、春は濃紅色の緋寒桜(ひかんざくら)と黄金色のヤマブキが咲き誇り、夏の紫陽花は互いに美しさを競って目を奪わんばかり。秋には紅葉の下で白く輝いている月を仰ぐことができます。冬は青空に映える梅の花がきれいです。
季節の変化を感じながら、坐禅体験ができる林叟院。
みなさんも、訪れてみてはいかがでしょうか。
【林叟院へのアクセスと坐禅情報】
林叟院(静岡県焼津市坂本1400番地)
・JR焼津駅から車で約10分
・JR焼津駅南口から焼津市自主運行バス焼津循環線(のりば①)にて約20分、「林叟院入口」を下車して徒歩10分。
・JR焼津駅南口から路線バスしずてつジャストライン焼津‐岡部線(のりば①)にて約10分、「坂本」を下車して徒歩15分。
◆早朝坐禅
日時:原則毎朝(初回は要事前連絡)
6:00~坐禅(坐禅堂にて)
6:45~勤行(本堂にて読経)
7:05 終了 勤行は自由参加。坐禅のみでも可。
会費:無料
◆坐禅体験会
日時:原則毎月第2・第4土曜日(要予約)
8:00~8:45 説明時間を含む(坐禅堂にて)
8:45~9:30 茶話会(衆寮にて・参加自由)
※感染症予防に配慮し、現在茶話会は行っていません。
会費:無料
詳しい坐禅情報は、林叟院のホームページをご覧ください。

焼津まちかどリポーター
Da Bing
中国出身。留学を機に静岡市へ。大学院で文化人類学を専攻。海が好きで焼津市に勤務。この町の魅力を県内、県外、さらに海外まで、もっと多くの人に知ってもらいたく、まちリポに参加。 宜しくお願い致します。
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