イ草は荒れた農地の救世主になるかもしれない
今年7月14日、焼津神社で新しい薄縁を奉納する式典が行われました。
薄縁(うすべり)とは何ですか?
薄縁は、畳表(たたみおもて)に布の縁(へり)を付けた
薄い敷物のことで、イ草から作られています。
縁(へり)のついた茣蓙(ござ)もしくは畳の表だけのもの・・・
という説明で理解していただけるかと思います。
焼津でイ草栽培を始めました
この薄縁を奉納したのは都内に本社がある畳メーカー、株式会社キツタカです。
5年前、キツタカは焼津市田尻北で圃場(ほじょう)を整備してイ草の栽培を始めました。
今回奉納した薄縁はここで収穫したイ草を市内の作業場で加工し、製品化したもので、いわば純焼津産です。
ようやく奉納の日を迎えました
新しい薄縁が敷かれた拝殿に中野弘道焼津市長をはじめ、キツタカ代表取締役社長、橘髙勝人さん、さらにキツタカ社員で現地のイ草栽培を担当する横田菜々さんなど、関係者およそ20人が参列し、奉納の式に臨みました。
そして地元で栽培されたイ草から無事、薄縁が完成したことを祝い、感謝して、今後の事業発展を祈念したということです。
焼津神社では境内に新たな駐車場の整備が進められ、
「拝殿の薄縁とともに新たな気分で今年8月の例大祭に臨むことができます」と
感謝の気持ちを伝えていました。
15年ぶりの新しい薄縁です
神社拝殿の床は横幅7間、奥行3間半で49畳分の広さがあります。
薄縁の取り換えは、15年ぶりのことで、
この日は朝からキツタカの皆さんが、汗だくで作業に当たっていました。
噂の農業女子
現地でイ草栽培を担当する横田さんは、地元焼津市の出身で、農水省が農業振興を目的に立ち上げた「農業女子プロジェクト」のメンバーとしても活動しています。
Vログ、YouTubeなどネットで農業の魅力を伝え、クラウドファンディングで資金を集め、今後の商品開発やイ草をテーマとしたイベント開催等、夢は尽きないようです。
もっと彼女のことを知りたいという方は、下記のリンク先をご覧ください。
https://lit.link/1938
元々は耕作放棄地
イ草が栽培されているのは、焼津市田尻北の以前は耕作放棄地だった圃場です。
この地区を流れる木屋川は、大潮、高潮の時、海水が逆流することがあり、塩害に苦しめられてきたといわれます。
思うように収穫が見込めないことから、耕作をあきらめ、放置された荒れ地は年々増加の一途で、地元JAや県、市などがその対応策を検討していたということです。
イ草が塩害に強く、また自社栽培に向けて土地を探していた畳メーカーのキツタカに打診したところ、田尻北の耕作放棄地で栽培に取り組むこととなったようです。
キツタカは放棄地を無償で借りて、2017年1月から試験的にイ草の栽培を始めました。
手始めに作付面積20アールからスタート。
しかしこの時は製品化に至るほどの出来ではなかったそうです。
イ草栽培の本場は九州・熊本です。
熊本の栽培農家を招いて指導を仰ぎ、収穫時期をずらすなど工夫をして、改良を重ねてきました。
そして栽培開始から4年目の昨年7月に収穫したイ草から、この日奉納した薄縁が完成しました。
その後作付面積を40アールにひろげ、今年7月下旬には収穫を予定しています。
イ草や畳をめぐる環境は決して明るいものではないかもしれません。
農業女子の活動と焼津の荒れ地を再生させる新たな試みは緒に就いたばかりで、今後、イ草のようにすくすくと成長していくかどうか、とても楽しみなことです。

焼津まちかどリポーター
グリーントマト
まもなくリタイア予定の会社員です。生まれは旧大井川町で、学生時代と勤務先の転勤期間を除き、焼津市に住んでいます。今まで経験したことのないものにチャレンジして、セカンドライフを少しでも充実させたい、いつまでも新鮮を持ち続けていたいというが目下の理想です。
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