2021.10.04

連載「プロフェッショナル!挑戦する焼津の企業」 大正時代の想いを未来へつなぐ 「DESIGN×ものづくり」のクリエイティブ企業 株式会社サイダ・UMS

豊かな自然とおいしい食べ物だけでなく、焼津は多くのものづくりやサービスの企業が集まるところとして知られています。精密工作機械の製造を手がける株式会社サイダ・UMSを見学し、斎田社長のお話を伺うことで、焼津を代表するクリエイティブ企業の魅力を発見!

100年の歴史を持つ株式会社サイダ・UMSの強み、そして、新たな挑戦について紹介します。

 

サイダ・UMS本社

 

大正の「鍛冶屋」から精密工作機械の会社への歩み

斎田社長の話によると、大阪出身で発明家だった曾祖父・時次郎さんは昔、日本全国で仕事をするなか、焼津に立ち寄ったそうです。時次郎さんは温暖で住みやすい焼津が気に入り、1921年、焼津で鍛冶屋「斎田鐵工所」を開きました。創業当時は船のエンジン部品の加工を行っていましたが、その後、事業を拡大。今の主力事業である工作機械の製造・組立事業へ参入しました。2003年にサイダ・UMSに社名を変更し、2021年8月に丸100周年を迎えました。

 

「手」が生み出す “○○”以上の価値

サイダ・UMSは精密工作機械を製造するものづくりの会社です。

三代目の「技術にハート、製品に思いやり」を原点に、五代目の斎田社長は「モノづくりのプロ集団として、一人一人が想ううれしいをその手でカタチに~SAIDA’s QUALTY design~」という新たな理念を掲げました。

時代の流れとともに変化する事業。現在は、大きく2つの事業を展開しています。

  • お客様の要望に応じて製品(部品・機械)の加工、組立、完成検査工程まで一貫して行うOEM事業
  • 汎用旋盤「VERSEC-neo(ヴェルセック・ネオ)」などの自社製品の開発・販売を行う事業

 

斎田社長

 

機械の製造工程には、主に機械加工と精密組立の2つの工程があります。その中でも加工の工程には、手作業による加工とプログラムによる機械加工の2通りがあります。サイダ・UMSではすべての工程を機械に頼るのではなく、人間の手でしかできない繊細な工程は熟練の社員が心を込めて丁寧に行います。例えば、機械による加工では実現できない微小な凸凹やゆがみ部分を手作業で削る「キサゲ」作業。習得には長い年月を必要とする匠の技です。実際に目の前で作業を見せていただきました。社員の手によって微細に削られていく表面を見ていると、まるで美しい紋様を描いているようで、間近に見る職人技には感動を覚えました。

「キサゲ」の作業

 

「DESIGN×ものづくり」によって商品改革と会社のブランディングを

製造業の会社といえば広い工場を連想しますが、サイダ・UMSにはメインオフィスが1つ、工場が2つあり、3つともクリーンな環境でした。特に、オフィスは大きなガラスによって光が入りやすい非常に開放的な空間。会議室からは富士山が見え、焼津の穏やかな景色が目の前に広がっていました。

 

会議室から眺める富士山

 

さらに、オフィスのエントランスには造形作家・鯱丸邦生(しゃちまる・くにお)さんによるアート作品「轍(てつ)」が置かれています。鯱丸さんは会社がコラボしている作家さんだそうで、この「轍」という作品は鍛冶屋カート。道具づくりの原点である「火」と「鉄」を表し、先人達の「手」によるモノづくりを表す作品です。金属を溶かして加工するサイダ・UMSの原点にもつながっています。

 

「轍」

 

サイダ・UMSでは、社員のクリエイティブな発想を歓迎することによって、機械の機能性を高い品質に保つだけでなく、硬いイメージの「機械」にアートの精神を吹き込みます。その代表的な例が、自社ブランド製品の「VERSEC-neo」です。操作に一定の慣れを要する従来の汎用旋盤に対して、その旋盤を新しく改革するために2009年から研究・開発を始め、2015年に今のモダンな旋盤をリリースしました。「VERSEC」は「Versatility (多才)」と「Eccentric(風変わりな)」という2つの言葉から生まれた造語です。

 

従来の汎用旋盤

サイダ・UMSオリジナル21世紀「VERSEC-neo」汎用旋盤

 

「VERSEC-neo」の最大な特徴は、造形作家・鯱丸邦生さんがデザインを手がけたことです。従来からの普遍的な汎用旋盤としての操作性に加え、「機能性が優れている」「デザインが良い」といった〝21世紀型の普通旋盤″として作り上げられました。

 

斎田社長によると、汎用旋盤を生産する会社は日本全国に数社しかないそうです。その中でサイダ・UMSの「VERSEC-neo」は、鋳物から機械加工、組み立てに至るまで全ての工程を日本国内で製造。安心の純国産である上に、誰でも簡単に・自在に操作できる「今までにない操作性」が強み。例えば、速度などの切削条件を設定した後も、機械を止めることなく速度を調整することができます。切りくずの状況を見ながら、作業員の意のままに切削条件をコントロールできるそうです。

 

オーディオの音量を調整するように変速も自在

加工で発生した「切粉」(削った際に発生した金属片)

VERSEC-neoをはじめ、社内の日常の様子を自社SNSで紹介している。日本国内のみならず海外の技術者や機械マニアからも「いいね」やコメントなどの反応があるとのこと。

 

さらには、チャックカバー(主軸回転時にカバーを開けると回転が停止する)やチャックハンドルホルダ(誤動作を予防する安全キー)など安全性も高く、2021年4月には三条市立大学ものづくりシアターにVERSEC-neo 9台を納入。同大の学長からは、「この大学で未来の技術を担う進化する人材を育成したい。それを実現するためにVERSEC-neoは探し求めていたものでした」という声が寄せられました。

チャックハンドルを付けたままでは主軸が起動しないよう設計

 

クリエイティブな発想が会社のイメージをアップする

サイダ・UMSのクリエイティブ性は自社製品にとどまりません。オレンジを基調とした社員の作業着もその発想力から生まれたものです。ただ、機械のデザインを刷新するだけではなく、新しい「ブランド」を立ち上げたいという想いから、VERSECのもつモノトーン(黒とシルバー)の色合いの中に「さし色」としてオレンジを入れることでブランド(VERSEC)全体のカラーのバランスを保っているそうです。今ではVERSECに関わる社員に限らず、会社全体のユニフォームとして定着しました。

安全色で視認性のよいオレンジが目を引く作業着

 

さらに、工作機械の展示会に出展した際には、単に機械を並べるのではなく、用意した黒板に鯱丸さんや社員たちがイラストやメモを手書き。出来上がったボードは、まるで設計図の一部のようです。他にも、VERSECを紹介するフリーペーパーもサイダ・UMSらしく工夫されており、クリエイティブな発想の精神がいたるところに行き届いていると感じます。そうした工夫が、「サイダ・UMS=技術的・美術的なコンセプトを持つ会社」というイメージにつながっているのです。

展示会で掲示したボード

「VERSEC」のフリーペーパー

 

社員の声

入社8年目の三浦さんは、製造部VERSECグループで自社製品「VERSEC」の設計を担当しています。

「大学で工作機械を勉強していたので、その知識を活かして地元の企業に貢献したいと思っていました。図面を描く設計の仕事だけではなく、現場で組立を行ったり、部品や工具を固定する治具(じぐ)も加工したり、自由に機械を触らせてもらえるのはありがたいと思います。「サイダでは≪やりすぎる≫ということはない」という行動指針がありますが、チャレンジを恐れずに、自分で判断してものをつくれるようになりたいと思っています」

斎田社長のメッセージ

さまざまな分野・業界でロボットの技術や機械の技術が求められるようになった今、サイダ・UMSのものづくりの技術・ノウハウの強みを活かし、新しいアイデアを持つものづくりベンチャー企業との連携に挑戦したいと考えています。それによって、医療やエネルギー環境、半導体などの異なる業界にも進出していきたいですね。「ものづくりが好きなひと」「スキルアップを目指して打ち込める人」「クリエイティブなことに挑戦したい人」は大歓迎です。興味のある方はぜひ会社見学にいらしてください。

関連リンク:

公式サイト:https://www.saidagroup.jp/ums/
採用情報:https://www.saidagroup.jp/ums/employment
会社紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=OQBCjdcPddY&list=TLGGLbaNyVCPRokyNzA4MjAyMQ&t=2s
自社製品VERSEC-neo:https://www.youtube.com/watch?v=_RXjUj5gVUc
SNS:
https://www.instagram.com/versec_lathe/
https://www.youtube.com/user/verseclathe/videos
https://twitter.com/versec_lathe

取材を終えて

サイダ・UMSのオフィスや同社が手掛けるVERSEC-neoにアートの要素があることを知り、魅力を感じました。また、そのユニークな会社を経営している斎田社長にも興味を持ちました。幼い頃からものづくりが大好きだったという斎田社長。漫画「SLAM DUNK」が人気だった頃には、バスケットゴールを自作し、どうすればボールがネットを通り抜けるときに「パシュッ」という音がするか研究を重ねたそうです。その後も、斎田社長のものづくり精神は変わらず、機械やロボットへの興味が深まり、気づけば博士課程まで研究を続けたと伺いました。今回の取材で専門性が高く、発想力豊かなサイダ・UMSについて知りましたが、どのように発展していくのかがとても楽しみになりました。

まちかどリポーター:スイートピー
この記事を書いた人
焼津まちかどリポーター 
スイートピー

ベトナム出身。大学入学を機に静岡へ。焼津の会社に就職したことをきっかけに、焼津の文化・価値を発見して、多くの人に伝えていきたいという思いがより強く。趣味は写真を撮ること。
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